アジア教育最前線 マレーシアレポート 第一回 インターナショナルスクールの開校ラッシュ

まだ薄暗いクアラルンプールの朝7時前。外国人が多く住むコンドミニアムには次々と異なるインターナショナルスクール(以下、「インター」)のバスが到着する。

今、マレーシアでは空前のインターナショナルスクールの開校ラッシュが続いています。4年前まで国内に21校しかなかったインターが、現在99校、さらに23校のライセンスが既に教育省から発行されているといいます。

マレーシア政府は、経済成長戦略のひとつとして教育ハブとなることを掲げており、2010年にインターの生徒数に占めるマレーシア人比率40%の枠が取り払われると、一気に新規参入が加速しました。政府は2020年までに国内のインターを87校、生徒数を75000人にまで増やすことを目標にしていましたが、2014年現在、学校数はすでにその数を優に超えています。しかし生徒数はというと、2014年4月の教育省の発表によれば39460人と目標値を依然下回っています。
新設校がスタートアップから徐々に定員枠を増やしていくことを考えれば2020年には達成できるのかもしれませんが、素人目に考えて、インターの高額な学費に耐え得る世帯が一労働者当たり平均賃金約76000円(RM 2,185 2013年政府統計より)の国内にこんなにもいるのだろうかと疑問が残ります。

そもそもインターは外国に住む子弟が本国と同等の教育を受けられるようにという趣旨のもと、生徒の大半は、会社からの教育補助がある外国人の駐在員子女、もしくはマレーシア人であればかなりの高額所得世帯に限られていたはずです。そこにそもそもの趣旨とは少し毛色が異なる学校が登場し始め、ターゲットは今、マレーシア人生徒の獲得に向かっているようです。前述の教育省のデータによれば、現在、インターに通う生徒の50.3%はマレーシア人が占めているというから驚きです。

a12013年のマレーシアのインターナショナルスクールの数(データは2014年1月31日時点のもの)*出典:http://www.themalaymailonline.com

 

インターといえば、高額な学費。通常、学年と共に増え続ける学費は、Year13(日本の高校2年生)ともなると平均的なところで年250万、比較的安めのインターでも100万円を下回ることはまずありません。中高一貫どころか、幼稚園、小学校からの一貫教育が主流のインター。高校までの教育費だけで一体いくらになるのでしょうか。インターを新設するには、少なくとも10億5千万円(RM30 million)はかかるといわれています。マレーシアでのインターナショナルスクールという一大ビジネス。学校側に確固たる勝算はあるのでしょうか。

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インターナショナルスクールの学費
出典http://www.themalaymailonline.com

日本では予算を抑えて留学できる国としてマレーシア、特に「マレーシアへの母子留学」が報道番組などで度々報じられ、関心が高まっています。教育ハブを目指すマレーシアにとってはまさに狙い通り。しかし、留学先をインターに限るならば、その学費は日本の私立学校よりもはるかに高く、日本のインターとあまり変わらないレベルにあるという事実は知っておいた方がよさそうです。

次回は、マレーシアでインターナショナルスクール需要が高まっている理由を探るべく、多民族国家ならではのマレーシアの教育制度、教育事情に迫ります。 

Reported by菅原研究所 和田麻紀子