炊飯ツールあれこれ

食のグローバル化が進み、米の消費量は減少傾向にありますが、それでも米が主食の日本人、炊き立てのご飯に味噌汁を食べると、ほっとしますね。毎日食べるものだから、美味しいご飯に対する要求も高くなります。
わたしたち日本人が美味しいと感じるご飯は、炊き上がったときにお米の一粒一粒がつやつやふっくらしていて、口に入れるとほんのり甘く、ほどよい粘りと噛みごたえがあるものです。

かつて、ご飯は羽釜という金属製の釜に米と水を入れ、木製の蓋をしてかまどに置き、薪の火で炊いていました。美味しいご飯を炊くには微妙な火加減が必要で、しばらくかまどから目を離せませんが、台所は香ばしい香りに包まれたことでしょう。

戦後の高度成長期以後は電気やガスを使った炊飯器が普及し、特に電気炊飯器はどんどん進化を遂げていきました。美味しいご飯を炊くには手間と時間がかかったのですが、家電メーカーはかまどや釜の構造を研究し、同様の原理で炊飯できる機器を開発し、予約タイマーや保温装置を付けることで、人々は好きな時間に炊いて、いつでも温かいご飯が食べられるようになりました。

近年、スローフードといった風潮や、2011年に起こった地震による停電の経験などを理由に、電気に頼らない炊飯手段にも注目が集まっています。ガスコンロに土鍋を使ってご飯を炊く人や、ストウブなど有名ブランドの厚手鍋を使う人など、いずれも電気炊飯器より美味しいと主張しています。美味しいご飯にこだわりの強い人ほど、電気炊飯器を使わない方法でご飯を炊く人が多いように思います。

最新の炊飯ツールでは、一人暮らしの人向けに炊飯機能付きお弁当箱というものがあります。電熱器の上に米と水を入れた容器を載せ、その上におかずや味噌汁を入れた容器を重ね蓋をして40分。炊飯時の熱でおかずや汁も加熱され、ご飯が出来上がった頃にはすべて温かくなっています。やっぱり炊き立てが一番ですね。

Reported by 菅原研究所 青池ゆかり

五穀豊穣

日本人は万葉の昔から「五穀豊穣を祈願」してきましたが、五穀とは何でしょう?五穀とは、米、麦、大豆、あわ、きび(またはひえ)のことを言います。農耕文化の始まりから、人々は様々な穀類を栽培してきましたが、日本では稲を含む五穀を育て、日々の糧としてきたのです。

日本人にとって、五穀の中でお米は最も重要ですが、それ以外の穀類も非常に重要な存在でした。例えば、麦は米に次いで重要な穀類。ムギ農耕はおよそ1万年の歴史があるとのことですが、小麦および大麦の栽培が日本に伝えられたのは弥生時代とされています。ムギは水田の裏作として栽培されましたが、その用途は主に家畜の飼料でした。ひき臼の技術が進んだ江戸時代になってようやく、一般市民もうどんや饅頭などの粉製品を食べることができるようになりました。

「畑の肉」と言われる大豆は、日本人にとって大事なタンパク源のひとつ。また、醤油や味噌など、わたしたちの食事に欠かせない伝統的な調味料の原材料でもあることから、五穀のひとつに加えられたのは当然でしょう。

あわ、きび(またはひえ)など、小粒のイネ科作物は「雑穀」と総称されていますが、これらは主要な穀類よりも栽培期間が短く、肥沃でない土地や雨の少ない地域でもよく育ち、虫がつきにくい。そのため、イネが不作のときに食べる代用穀物として、あるいは鳥や家畜のえさとして育てていたのです。昔、庶民は100%コメのご飯が食べられることはめったになく、お米にあわ、きび、ひえや大麦を入れかさ増ししたご飯を食べていたのです。

最近になって、雑穀と称されるあわやきびなどに含まれる栄養成分が重視されています。昔の人々と違い、わたしたちは真っ白に精米された米を「銀シャリ」と好んで食べますが、白米には精米しない米に含まれていたビタミンやミネラルが不足しているのです。「五穀豊穣」の意味をよく考えて、ご飯を食べる必要があるのかもしれませんね。

Reported by 菅原研究所 青池ゆかり