五穀豊穣

日本人は万葉の昔から「五穀豊穣を祈願」してきましたが、五穀とは何でしょう?五穀とは、米、麦、大豆、あわ、きび(またはひえ)のことを言います。農耕文化の始まりから、人々は様々な穀類を栽培してきましたが、日本では稲を含む五穀を育て、日々の糧としてきたのです。

日本人にとって、五穀の中でお米は最も重要ですが、それ以外の穀類も非常に重要な存在でした。例えば、麦は米に次いで重要な穀類。ムギ農耕はおよそ1万年の歴史があるとのことですが、小麦および大麦の栽培が日本に伝えられたのは弥生時代とされています。ムギは水田の裏作として栽培されましたが、その用途は主に家畜の飼料でした。ひき臼の技術が進んだ江戸時代になってようやく、一般市民もうどんや饅頭などの粉製品を食べることができるようになりました。

「畑の肉」と言われる大豆は、日本人にとって大事なタンパク源のひとつ。また、醤油や味噌など、わたしたちの食事に欠かせない伝統的な調味料の原材料でもあることから、五穀のひとつに加えられたのは当然でしょう。

あわ、きび(またはひえ)など、小粒のイネ科作物は「雑穀」と総称されていますが、これらは主要な穀類よりも栽培期間が短く、肥沃でない土地や雨の少ない地域でもよく育ち、虫がつきにくい。そのため、イネが不作のときに食べる代用穀物として、あるいは鳥や家畜のえさとして育てていたのです。昔、庶民は100%コメのご飯が食べられることはめったになく、お米にあわ、きび、ひえや大麦を入れかさ増ししたご飯を食べていたのです。

最近になって、雑穀と称されるあわやきびなどに含まれる栄養成分が重視されています。昔の人々と違い、わたしたちは真っ白に精米された米を「銀シャリ」と好んで食べますが、白米には精米しない米に含まれていたビタミンやミネラルが不足しているのです。「五穀豊穣」の意味をよく考えて、ご飯を食べる必要があるのかもしれませんね。

Reported by 菅原研究所 青池ゆかり