空腹になると、なんとなく怒りっぽくなったり、落ち着かなかったりするものです。こんなとき、ちょっとでも食べ物を口に入れることによってイライラがおさまった経験をお持ちの方は少なくないでしょう。
このイライラの犯人は、じつは血糖値というものなのです。砂糖の含まれる量が非常に多いものを食べると、砂糖は小腸の上部で一気に吸収され、ブドウ糖に変わりますが、このとき砂糖はあまりにも吸収が早いために、血液中の血糖値が急上昇してしまいます。すると、血糖値が高くなったことがサインになって、インシュリンがドッと出てきます。 インシュリンには血糖値を下げる働きがありますから、こんどは逆に一気に血糖値が下げられます。しかもその下がり方があまりにも急なので、甘いものを食べる前の血糖値よりもずっと低い血糖値、つまり低血糖状態に陥ることになります。
この低血糖というのは、人間にとって非常に不快な心身の状態を作りだす厄介なものなのです。たとえば、目まい、冷や汗、イライラ、動機、集中力がなくなるなど、仕事や勉強の能率アップを妨げることばかり引き起こしてしまいます。 低血糖に陥ると、その不愉快な心身状態から一刻も早く抜け出すために、手っ取り早い血糖値の上げ方を、人は知らず知らずのうちにしてしまいがちです。例えば、その一つの行動が、甘いお菓子や清涼飲料水を再び口にほうり込むことなのです。そうすれば、確かに血糖値は、低血糖値から一足跳びに高血糖へと跳ね上がります。
しかし、こうして上げられた血糖値は、最初にお話したように、あっと今にふたたび低血糖に戻るのです。つまり、低血糖と高血糖の間を振り子のように、行ったり来たりしているのです。このようなことを繰り返して、その都度インシュリンの異常分泌が続くと、成人病の代表とも言うべき糖尿病になります。 また、インシュリンが過剰に分泌すると、それと同時にアドレナリンが過剰に分泌してしまいます。実は、これは人を攻撃的にさせるホルモンなのです。イライラや喧嘩を起こしたり、短絡的な判断で自分の非を認めず他人のせいにしたりするのは、このアドレナリンのせいなのです。
ひと言注意すると「メンツをつぶされた」などと称してすぐにカッとなって暴力行為に及ぶなどと言う、いわゆる校内暴力や家庭内暴力の原因の一つもこのあたりにあるのです。 実際に、非行児は普通の中学生の二倍以上の清涼飲料水を飲んでいるという調査データもあるくらいで、非行の大きな原因のひとつに低血糖がかかわっているのは間違いありません。
さらに、血糖値が急速に低下した場合には、脳にある酸素の消費量も並行して下がるので、たとえば間違ってインシュリンの薬を飲んでしまった場合には、急速な呼吸量の減少によって、昏睡状態に陥ってしまうことすらあります。 ところが、糖尿病になると、血糖値が倍くらいの高さになり、時には急に低くなったりします。血糖値が下がった時には精神が不安定になり、強迫観念に取り付かれたり、あらぬ妄想をいだいたり、冷や汗がでたり、精神状態がグラグラと揺れ動きます。こういうときに犯罪と結びついたり、交通事故に遭遇したりするケースが非常に多いのです。 アメリカのオハイオ州地方裁判所主席保護監察官であるリード女史のデータによると、収容されている犯罪者106人中、そのほとんどが血糖値異常者でした。
・・・『~ 非行は食べ物が原因だった~ ②』へ続く