朝食はパンよりもご飯のほうがよい
では、血糖値をパン食と米食、つまり、欧米型と日本型の食事の比較で見てみましょう。朝食を「砂糖の多いコーヒーとペストリーに目玉焼きのようなもの」ですませた場合と、「ご飯と味噌汁におひたし、焼き魚、海苔の和食」ですませて学校へいった場合と「砂糖を入れたコーヒーだけ」を飲んで学校へいった場合とを比べてみると、どんな生理的な違いが生まれてくるでしょうか。
以前、私は七名の大学生を使い、三週間がかりで血糖値の実験をしたことがあります。一週間目は同カロリーのご飯を食べ、次の週は同カロリーのパン、次の週は砂糖を同カロリー食べてもらいました。その結果、同じ人で、砂糖を食べた場合は、30分後に著しい高血糖を示し、逆に2時間もすると、砂糖を食べる前の最低の血糖値(100)をはるかに下回る低血糖(50)を示すことが分かりました。
これは、子供にも同様にあてはまります。つまり、朝食にコーヒーと牛乳やコーヒー1杯ででかけてきた子供は、朝食2時間後にはひどい低血糖症で、冷や汗、動機、決断力のなさ、精神の空白、集中力がなくなる、などの症状をもたらし、学校にいてもとても勉強どころではありません。また、実際に校内暴力の多い学校では、午前中の二時間目、三時間目の休み時間に、上履きのままで、学校の外まで清涼飲料水を買いに行く生徒が非常に多く、そうした空カンが老化にゴロゴロ転がっているありさまです。
次に、パンと米を比較すると、血糖値はパンの方が少しはやく下がっていく傾向にあります。つまり、この差は粉食と粒食の差といえますが、粉食のばあいは消化吸収がよく、腸内からブドウ糖になって吸収されるスピードが粒食の米よりはやいのです。 したがって、パン食のばあいは、食べてから約2時間半から3時間で、もとの低血糖にもどる傾向があり、学校でいえば、お腹がグーグーすいた状態で勉強に身が入らず、昼食をいまかいまかと待っている状態になると考えてよいでしょう。
こうした科学的な観点からみても、古くからの日本食は、血糖値をもっとも長く安定した状態に保つので、その分、食べ物のことを忘れていられるということになります。ここにも、朝食における和食が見直される原因があります。
昔風でんぷん質おやつのすすめ
では、具体的に低血糖をひきおこす食品にはどんなものがあるかみてみましょう。白砂糖を多く含んだアメ、チョコ、アイスクリーム、清涼飲料水などです。砂糖というものは、ブドウ糖と果糖からなりたっていますが、構造が単純なために吸収されやすく、一挙に高血糖になってしまうのです。
昔の子供たちは一日にたいてい一回のおやつしか与えられていませんでした。それなのに夕食の時間まで十分に満足して遊び、食事のときには、お腹がペコペコの状態でおいしく夕食を食べたのは、じつはデンプン質のおやつが持つメリットのためだったのです。 焼きぐり、ふかしたさつまいも、大学芋、お好み焼き、麦こがし、きなこアメ、ゴマせんぺいといった昔ながらのデンプン質のおやつは、腹持ちがよく、しかも子供たちの血糖値を長い時間にわたって安定した状態に保つのです。しかもそれらは、砂糖や塩分の含有量が、今のおやつよりぐっと少ないだけでなく、ずっと歯ごたえがあって、繊維を多く含んでいます。その上にビタミンやエネルギー含有量もずっと多いのです。
すでにおわかりのように、血糖値と現代っ子の食生活とは、ひじょうに密接な関係にあります。完食が多く、さらに砂糖の多い食事をするために、血糖値が急激に上がったり下がったりする子供が増えているからです。
子供の健康のために、そして非行児をつくらないためにも、この血糖値のことをぜひおすすめします。