お国自慢・味自慢―日本の乾物 ④

ほぼ全世界で食べられている、人気の食べ物といえば、麺。欧米では、スパゲッティーなどイタリア発祥のロングパスタ、アジア全域では中国発祥のさまざまな中華麺があります。日本人は世界有数の麺好きで、近年ではパスタやラーメンも人気が高いのですが、日本古来のそばやうどんは、江戸時代から人々に愛され続けています。
お店で食べるそばやうどんは生めんですが、家庭で作って食べるのはほとんどが乾麺です。

そばやうどんの原型は奈良時代頃より存在していましたが、現在のように細長い麺の形で食べるようになったのは江戸時代以降です。江戸ではそばやうどんは屋台メニュー、今でいうファストフードでした。屋台では、茹でた麺に鰹節、昆布などでとった「だし」に醤油やみりん、砂糖で作った「かえし」を加えた「めんつゆ」をかけたものが売られていました。

いまや、そばもうどんも日本全国にありますが、概して中部地方を境に東日本ではそばが、西日本ではうどんが好まれています。そばの主な名産地は、長野県(信州そば)、岩手県(わんこそば)、新潟県(へぎそば)で、うどんの名産地は香川県(讃岐うどん)、秋田県(稲庭うどん)、愛知県(きしめん)です。名産地でいただくそばやうどんのお味は格別で、観光の目玉となっています。

同じく穀類の乾物として、麩があります。麩は小麦粉から抽出したグルテンに粉を混ぜて茹で、焼いたり揚げたりしたものです。お吸い物に入っている小さくてかわいい手まり麩から、車輪型の車麩、揚げパンのような油麩など、様々な形のものがあります。
麩は14世紀頃中国から伝わりましたが、グルテンを多く含む食品であることから、肉や魚を食べない禅僧たちのタンパク源として、精進料理に使われるようになりました。

麩の代表的な名産地は山形県(板麩)、新潟県(車麩)、宮城県(油麩)などで、煮物や炒め物、汁など様々な料理に使われます。麩自体に味はありませんが、タンパク質が豊富な健康食品であることに加え、スポンジのようにスープや調味料の味がしみ込んで、とっても美味しくいただける食材です。

上の二つの写真はいずれも野菜の乾物です。左は干瓢(かんぴょう)。ウリ科ユウガオの果実をひも状に剥き、乾燥させたものです。食物繊維とミネラルを豊富に含み、低カロリー。昔はお寿司屋さんで「海苔巻き」といえば、この干瓢入りの巻きずしを意味したほど、メジャーな寿司ネタでした。今では「干瓢巻き」と呼ばれています。甘辛く歯ごたえのある食感がお寿司にとても合う干瓢は、ちらしずしにも欠かせない食材です。江戸時代、大阪から栃木に本拠を移した大名が栽培を奨励し、以来、干瓢は全国の8割を生産する栃木県の名産品となっています。

写真右は切干大根。冬に収穫した大根を細く切って天日にさらして乾燥させたものです。食物繊維とミネラル、ビタミンB1、B2が豊富な健康食品です。生の大根の栄養分を凝縮した切干大根は、生の野菜が採れない時季の食糧として重要なものでした。水でもどして油揚げなどと煮て食べるのが一般的です。大根の生産量が多く、冬になると山から吹き降ろす冷たい風が生産に適していることから、切干大根は宮崎県の名産品で、全国の9割がここで作られています。

このように、日本の乾物は太陽を浴び、水分が抜けて栄養成分が凝縮された天然のサプリメントです。日本には、ブログで紹介したもの以外にもたくさんの乾物食材があり、いずれも先人の知恵によって加工された伝統食品です。見た目はとても地味ですが、旨み、食物繊維、ミネラルを豊富に含み、低カロリーの食材なので、ストレスや肥満、生活習慣病が気になる人はこれらの食材を採り入れてみることをお勧めします。

Reported by 菅原研究所 青池ゆかり