天日による栄養価向上のナゾ―日本の乾物 ⑤

これまで、日本の乾物について、歴史やエピソード、特徴など、様々な観点から書いてきましたが、今回はいくつかの食品について、生の状態と乾物にしたときの栄養の変化に注目してみたいと思います。

生の食物と乾物との違いは、何か?生の食べ物を一定時間天日にさらすことから、乾物は明らかに水分量が減ります。水分が減った分、栄養素がその食品の中に凝縮されるため、同じグラム数で比較した場合、乾物は生の食物よりもエネルギーやタンパク質、ミネラルなどの栄養成分を多く含むことになります。では、生と乾物の違いは、単に水分が減っただけなのでしょうか?

上の表は、生と乾物の栄養成分を比較したものです。
それぞれ、生と乾物とで水分量が異なること、そして水分が減っただけではない変化が起こっていることがわかります。
特に太字の数値に注目してください。例えば、わかめ。乾燥わかめは水分が減った以上にカリウムとカルシウムが増加しており、食物繊維も大幅に増えています。さらに、大根と切干大根を比べた場合はミネラル、ビタミン、食物繊維のすべてについて乾物の栄養成分が水分の差を大きく上回っています。干し柿も、生では渋くて食べられないものが、干すことによって、甘く、美味しく、ミネラルが豊富で、食物繊維がたっぷりの美容食に大変身です!

上の表には示されていませんが、アミノ酸や核酸などの旨み成分は明らかに乾物の方に多く含まれています。
例えば、鰹節にはおいしいだしのもと、旨み成分のイノシン酸が豊富に含まれていますが、生きている状態の鰹には存在しない物質です。鰹の死後、筋肉中の酵素が働いてイノシン酸が作られるのですが、そこで水分を抜き加工することによって、鰹節に多くのイノシン酸が含まれるようになります。

また、東洋医学では食物を、体を冷やす「陰」と体を温める「陽」のタイプに分類し、それらを適切に摂取して健康に導く方法を説いています。日の光をたっぷり浴びた乾物は、ほとんどが「陽」または「中間」の性質を持つため、新陳代謝を高め、抵抗力の向上に役立つ食物なのです。「冷えは万病のもと」と言いますが、陽性の食物は風邪やがんの予防にも効果があるとされています。

冷蔵・冷凍技術など、生の食物を保存する手段がなかった時代、人々は知恵を絞り、太陽光などの自然エネルギーを利用して乾燥させ、食物を保存することで食べ物が手に入らない時季の食生活を支えてきました。そして、これら先人の生きる知恵が生んだ乾物は、保存食以上の価値を今の私たちに伝えています。

このように、乾物は単に食品から水分を差し引いたマイナスの産物でなく、数多くの栄養成分、旨み成分が備わったプラスの産物です。自然のエネルギーをたくさん含んだ、ヘルシーで安全で美味しい食材、乾物に関心を持っていただき、毎日の食生活に活かしていただければと思います。

Reported by 菅原研究所 青池ゆかり