マレーシアレポート ~マレー式結婚披露宴~

一生のうちの大イベント、結婚。所変わればウェディングスタイルもいろいろです。先日私は初めてマレー系の結婚披露宴に出席しました。この貴重な結婚式のお呼ばれですが、在住邦人の中では珍しい体験というわけでもありません。というのは、マレー系のパーティー、クンドゥリ(kenduri)には、それほど親しくなくても気楽に招待を受けるからです。知らない人の結婚式に行く人も多くいる程で、村になればなるほど、大勢に食事が供されるといいます。日本のように最初から最後まで出席しなければいけないというスタイルではなく、都合の良い時に来て、食事をいただいて帰っていくという、とても気楽なスタイルです。
ホストは近所の人たちに協力してもらってご馳走を用意し、家に招くのが主流でしたが、特に都会では、ケータリングサービスを利用したり、会場を借りて行うスタイルが増えてきたようです。


チキン、ビーフの煮込みなどビュッフェ形式の食事。デザートはパイ生地にカレーを挟んだカリーパフと、見た目はういろうによく似た、お米とココナッツミルクで作るニョニャクエ。

待ちに待った新郎新婦の登場は開場から1時間半程経った頃。その前から皆ビュッフェ形式の食事を食べ始め、主役に会わずに帰る人さえいます。日取りのよい日には3,4件のウェディングが重なることも珍しくないようで、皆さっさと食事をして帰っていきます。
日本人にとってはとても違和感ある光景。しかし、「クンドゥリ」とは元々、貧しい人々や孤児にご馳走することを意味し、それが現代では親戚や友人などにご馳走する、パーティーの意味にまで広がっていったということですから、それを知れば、食事だけいただいて帰るという行動も全く失礼には当たらないと理解できそうな気がします。とはいえ、私達は席を立つタイミングがどうしてもつかめず、食事が終わっても最後まで長居してしまいましたが。


晴れの日には夫婦お揃いの色で合わせるのがマレー流。

日本の披露宴では、乾杯から始まり式次第に従って、食事をしながら時間も最後まで共有しますよね。当たり前のように感じていたこのスタイルですが、これはもしかして「酒宴」のスタイルなのかもしれません。マレー系の人達はお酒を飲みません。だから乾杯(スタート)がなく、各々好きな時に食べ始め、お酒がないからすぐに食事を終えて帰る、というのが自然な形で定着したのではないでしょうか。
昔から日本の宴にお酒は欠かせません。お酒を酌み交わすことで緊張を和らげ、会話が盛り上がり、美味しい食事が際立ち、楽しい時間を共有することができる。お酒は日本の文化であり、食のシーンから切っても切り離せないものです。
しかし所変われば世界にはお酒を飲まない文化もあり、現在、ムスリム(イスラム教徒)は増え続け、世界人口の4人に1人はムスリムだといいます。お酒好きの私としては、将来、お酒を飲む人口が縮小し、肩身が狭くなってしまったら嫌だなあと、少々危機感を感じてしまった、初マレー式結婚披露宴でした。


引き出物のケーキ。昔は子孫繁栄を意味するゆで卵が定番だったが、最近は多様化している

Reported by 菅原研究所 和田麻紀子