ニッポンのお葬式 ②

さて、今度は実際の葬儀についてお話しましょう。

葬儀費用の国際比較
前回のブログで触れた通り、日本人はその大半が故人の供養は仏式で行います。いわゆるお葬式、つまり通夜と告別式については、いくつかのパターンがありますが、一般的には故人の遺族の誰かが施主となり、親戚、友人、知人、近所の人々の参列を招いて執り行います。こうしたお葬式は結婚式と同様、人生の大イベントです。ですから、高額の費用がかかります。お葬式の費用は全国平均で200万円前後、結婚式は250万円前後とのこと。Wikipediaによれば、日本の葬儀費用はおよそ231万円で、米国では44万4千円、イギリスでは12万3千円とのことです。日本人の大半は、老後資金として自分の葬儀費用を念頭においてお金を貯めています。

もっとも、近年ではお葬式もこれまでの慣習にとらわれることなく、身内だけで葬儀を執り行う家族葬という形を取る人が増えているようです。夫やわたしはこの考え方に賛成で、派手なお葬式は要らないと思っています。

一方、義父が亡くなった時、義母は喪主として、イベント形式の葬儀をやりたいと言いました。義父は寡黙な人でにぎやかなのは好きではなかったのですが、義母は祭壇の前に父が趣味で書いていた油絵をたくさん飾って、皆に見てもらいたいと。義母にとっては、近所の人に「いいお葬式だったわね」と思われることが重要だったのです。ところが、義母は選んだり決めたりということができない性格。おかげで、長男の夫とその嫁であるわたしたちは義母に代わってあれやこれやと大忙しでした。やれやれ。

日本では家族が亡くなった途端、まず葬儀社を手配します。葬儀社は、遺体の処理はもちろん、葬儀場や僧侶の手配、祭壇の設営、親戚や弔問客の応対、ふるまい料理や香典返しの手配、火葬場への移動などを一手に引き受けます。日本の葬儀ビジネス、市場規模はなんと2兆円に手が届くのだとか。葬儀を開催する遺族、特に喪主は亡くなった人と最も近い関係にあるため、悲しみやら不安やらで葬儀の段取りどころではありません。ですから、葬儀の司会進行と弔問客の誘導を上手に行ってくれる葬儀社は、なくてはならない存在です。多くの場合、亡くなってからお葬式が済むまでの間のサービスを一貫して行うパッケージ料金になっており、葬儀が終わった数日後に巨額の請求書が届きます。

地獄の沙汰も金次第というのは本当?
葬儀社は、葬儀のときにお経をあげてくれる僧侶や、会場となる寺院や墓地とも関係を築いており、僧侶へのお布施の金額、僧侶が授けてくれる戒名の料金まで決めてくれます。戒名にはいくつかのランクがあって、金額もそれによって変わってきます。現代に生きる者としては、そのあたりの流れを見ていると、正直疑問を感じてしまいます。死後のステータスがお金で買えてしまう。しかも実際には、死後の世界の待遇には何の保証もないのに……。

こうしたイベント的な葬儀や戒名のシステムなどに疑問を抱くのはわたしだけではないようです。実際、葬儀費用が高すぎるという声は増えていて、近頃では格安料金でサービスを提供する葬儀社も出てきました。あるとき、「料金は98,000円から」という葬儀社の広告がビルに張り出されているのを目にしました。さっそくネットで調べてみましたが、その98,000円という料金はあくまで最低料金で、諸費用を加算すると、結局は最低でも30万、50万はかかることになっていました。

自分の最後はどうなりたいか?最近では、自分の葬儀や墓などの準備をすることを終活と呼び、頭も体も元気なうちに人生の終わり方を決めておくことがトレンドとなっています。今回の一件で、終活はやっておかねばならないと、つくづく思いました。自分の信条に合った人生の終わり方を考え、遺言を書き留めておくことは、自分のためにも、なにより家族のために必要なことだと考えます。また、できれば家族にも終わり方の希望を、書面なり口述なりで残してもらいたいものです。見送る人が困らないように。

Reported by 菅原研究所 青池ゆかり