精神を操る物質と腸

最近、駅前でどんどん増えているビジネス、、とはなんでしょう??  答えはいろいろありますが、その答えのうちの一つが、メンタルクリニックの増加です。

電話帳で引いても各駅ごとに10件(東京) 以上もあるのがわかります。  これは10年前にはなかったものです。 10年前は心を病むのは大変なことで、クリニックなどあまりお目にかかれなかったので、 大病院に行くしかなく、それこそ一大決心でもしないと高い敷居をまたげないのが普通でした。 

ところが私の家の近所にある老人の血圧コントロールを中心にしていたクリニックが、10年前ぐらいから、脳卒中の脳の部分にちなんで、脳神経クリニックと名前をあらため、今まで通りの血圧の薬を取りにくる人が60パーセントで、残りは鬱病などの患者を扱うようになったかな、、、と思っているうちに小さなクリニックが4階だてのビルを買い切り、立派なクリニックになってしまったのには、心底驚いています。その先生は平気で睡眠薬を1ヶ月分も出してしまうので、その度に看護婦さんに注意されているという、不思議なクリニックです。

ところで、イタリアでは公立の精神病院に通う患者は一人もいない、、(こころの免疫学  藤田紘一郎  新潮選書)  アメリカ、フランス、イギリスなどの先進国では精神科の病床数が急激に減少している中、日本だけが、増加し続けていることを藤田先生は指摘されています。薬頼みのやり方に限界をこれらの国ではすでに承知しているのと、今だに一人一日30錠に及ぶほどの薬を処方する日本には大きな違いがあります。

藤田先生は、中国科学院の金峰教授の乳酸菌で腸内細菌層をよくすると、動物実験では情緒が安定するのを証明していると本に書いています。特にそれ以上におもしろいのは、コロンビア大学のガーション博士の研究です。ガーション博士はどこにセロトニンが普段蓄えられているのかを調査するために、セロトニンの前駆物質である、5ヒドロキシトリプトファンに放射線のラベルしたものをマウスに注射したところ、それは速やかにセロトニンになり、 その95パーセントが腸に蓄えられていることを証明したのです。  そして、その大脳をまったりと癒しの状態に導くセロトニン(これが足りないと鬱になる) は腸の温度、乳酸菌などの条件がよければ大脳にスムーズに移動すると考えられるのです。

今まで脳科学で一度も指摘されない、、実は大脳から離れた所が、脳調の安定にすごく影響していたのだという考えは、現代人はきっちりと納得していくべきポイントです。
セロトニンに関わるSSRI  などの薬をあまり与えると、返ってセロトニンの合成量を下げて逆効果だと、最近は理解されつつありますが、セロトニンと腸に深い関係があるなら、やはり答えはしっかりと食物繊維を含んだものをよく食べる、、トリプトフアンを含んだ大豆、納豆、豆腐は健康に良いだけでなく、食物繊維を含み、腸内環境を整え、腸のセロトニンプールを増やしてくれると考えて、しっかり食べて行くことが、大事なのだと納得できるのです。

大昔ミミズのような腔腸動物は、大脳がないので、腸でものを考えていたとも考えられ、セロトニンという神経伝達物質を腸で作り、体全体をコントロールしていたのです。人間も、またその子孫でもあるので、今だにセロトニンを腸の中に95%もプールしているのでしょう。そして、ストレスがひどいと、セロトニンは急激に壊れていくので、ストレスになる仕事、ストレスになる人間はなるべくなら避けて行くのも大事ですね。