昨年、平山郁夫の三蔵法師の般若心経をインドから中国まで持って帰る旅の絵を全部収録し、さらに般若心経のお経を一つにまとめたハンドブックのことを私のラジオで取り上げました。その本をまとめたプロデューサーに平山郁夫さんの人生秘話についても話してもらいました。
般若心経と聞いて、それにピンとくる人は多くはないでしょう。 キアヌ・リーブス主演のリトルブッダで、 最後の頃にお坊さんが死ぬシーンで般若心経全部が出てくるので、それを思い出す人も多いでしょうか。
般若心経は一番短く、だから分かりにくいお経です。特に、、空、、empty の解釈によっては、五感もない(感覚で感じるものは、本当にない) 恐怖も、不安もない、と人生で私たちが感じる普通の喜びの対象を全部否定されるので、それでは凡人の幸せはどこにあるのだ!!!と反発してしまいます。
それでは坐禅でも5時間毎日やって、生活しないと人間は病気も苦しみも、死も恐怖しない静かな気持ちにはなれないのか???と無理難題だよ、それ!!と言ってしまいたくなります。
平山郁夫さんは15歳の時に広島原爆の爆心地に学生として作業していて、たった一人生き残った人です。芸術大学3年の時には、白血病で命が消えそうになった時に、立った一枚三蔵法師のお経を持って帰る絵を死ぬ前に描こうと決心し、制作し、それで画家としてデビューしました。 そうすると奇跡的に病気が消え、その後シルクロードの絵を200枚書き続ける寿命を天から授かったのです。
彼はその後、薬師寺に奉納するシルクロードと三蔵法師の絵を12枚寄贈するために、自分のお金ですべてのキャラバン費用1回につき数千万円で200回の旅を奥様と続け、スケッチを完成させ、その後中には1本1千万円を超える日本画の絵の具を買って描き続けました。旅では盗賊に襲われ、銃を突きつけられたこともあるということです。多分この度の総経費は100億近いのではと思ってしまいます。
まるでその生き様は現代の三蔵法師そのものです。わたしはその絵のスケールの大きさ、透明感の美しさに感動し、そして何よりも生きるパワーというものを感じます。
般若心経は難しいけど、私たちは自分の人生で自分のすべき使命を、大志を毎日しっかりと見つめ続けると、大宇宙がすべての条件を奇跡的に整えてくれるので、恐怖心も不安も全くいらない。 平山郁夫さんは死の恐怖心より、絵を残したい、という大志があって、恐怖心を空にし、病気を空にしたのです。 その後100億かかるシルクロードの絵の完成にも、お金のことも恐怖心を持たず、すべてが自分の絵を売って行けば、できるだろうということでお金を稼がなければばらないという人間の恐怖心や不安を空にして奇跡を起こしています。
般若心経は難しいけど、大志を持って、人が真剣にそれを正しい慈悲の心と共に祈れば、道は開け、振り返ると、盗賊もこちらを殺さず、お金もまわり、絵は多くの人の心を癒し、何百年も残っていけるパワーを持っていくのです。
この仕事を完成したのは夫婦の愛です。 いつも一緒に励まし合いながら二人で旅を続け、灼熱の砂漠、零下40度のヒマラヤでスケッチできたのです。悩みを捨てるのは難しいけど、もっと大きな望みをいつも北極星のように仰ぎ見て、それ以外のことは見向きもせずに歩けば、振り返ると、五感を超える大きな、大きな満足の行く仕事を私たちは誰でも生きているうちにできるのだと、般若心経、平山郁夫さんは亡くなられた後も、今なお般若心経の生き方の素晴らしさを伝えてくれているのだと思います。
この本は東京書籍で買うことができます。素晴らしい絵が沢山あり、唐の都からシルクロードを超え、ヒマラヤを超え、インド往復を体感できる素晴らしいハンドブックです。 中古だと800円ぐらいです。
(平山郁夫美術館公式ホームページより引用)