日本の皇室、日本全体の守り神、伊勢神宮 ①

ある統計によると、日本人の神道および仏教の信者数の合計は総人口のおよそ2倍になるといいます。統計が間違っているから?いえいえ、この統計が示しているのは、日本人の多くは神道と仏教の両方を信じているということです。他の国の人からすれば、不思議な宗教観を持った国民でしょうね。

わたしたちは生まれると、地元の神社にお宮参りをし、お祭りでは町の神社の神輿をかつぎます。そして結婚。神社での結婚式は明治時代に始まりましたが、1990年代までは大多数のカップルが神前結婚式を行っていました。ところが死んだ後は仏になってお寺のお墓に埋められるため、先祖の供養や法事は神社でなく寺で行われます。 このシステムは、生まれたときから日々の習慣として受け継がれているので、わたしたちにはごく自然なことなのです。日本人は冠婚葬祭をはじめ、生まれてから亡くなるまでの様々な局面で神と仏、神社やお寺と深く結びついています。

日本人は特定の信仰を持つ、というよりは、自分と自分を取り巻く自然や環境、目に見えないスピリチュアルなものに畏怖の念をおぼえます。森羅万象、あらゆる事物に神が宿り、いつもわたしたちの周りに存在している。八百万の神(やおよろずのかみ)がわたしたちの神様です。 そうした感覚は、日本人が古代から農耕中心の社会を形成してきたことと関係があり、わたしたちは自然を崇めることで自らを律してきたのかもしれません。

さて、日本にはおよそ8万社の神社がありますが、中でも皇族の祖神で日本国全体の守り神、天照大御神を祀っている伊勢神宮は日本を代表する神社です。 この神社が神宮として建設されたのは今から1300年ほど前、飛鳥時代の頃のことで、その敷地の広さはおよそ5,500ヘクタール(13,600エーカー)とのことです。

何より不思議なのは、1300年間誰からも攻撃されず、燃やされず、辱めを受けることなく、常に神聖さを保ち時の権力者から守られてきた宗教施設、しかも吹けば飛ぶような、簡素な木造の小さな家のようなこの施設が歴史を超えて存在することは、歴史学者からすれば、もしくは一般外国人から見ても、奇跡としか言いようがありません。 逆に言えば、そこに伊勢神宮があり続けることを当たり前と思ってきた日本人は、世界中で起こってきた殺戮と破壊の歴史から切り離されてきた、地上の楽園に暮らす民族だったとも言えるでしょう。第二次世界大戦の悲惨さを経験したことを加味してもです。

伊勢神宮では建立当時から今なお続く一大イベントがあります。それは、20年に一度の式年遷宮です。 式年遷宮とは、20年ごとに、神宮の社殿はもちろん、宝殿、御垣(みかき)鳥居など聖域内のすべての建物を建て替え、正殿内の装束や神宝を新調して納めるという、大規模かつ重要な行事です。 今年はちょうどその開催年にあたり、2013年10月には第62回神宮式年遷宮が行われます。この一大イベントは8年も前から準備が開始されていて、費用の総額はなんと550億円!

しかも、第二次世界大戦後、我が国は国家神道の国ではなくなったので、税金で賄われているのは一部、ほとんどが一般からの寄付だというのですから余計におどろきです。慶応大学講師竹田恒泰先生は明治天皇の血を引く人ですが、全国で年間300回の無料講演会を開いてこの費用を集めるために命がけの仕事をされています。

伊勢神宮公式ホームページ:http://www.isejingu.or.jp/shosai/

Reported by 菅原研究所 青池ゆかり、菅原明子