日本の皇室、日本全体の守り神、伊勢神宮 ②

伊勢神宮において、20年ごとに遷宮をするようになった本当の理由については不明ですが、以下の理由が考えられます: ・1300年前の建築様式を守り続けているため、柱などが老朽化しやすく長持ちしない ・毎年開催される五穀豊穣を願う神嘗祭の拡大イベントとして開催 ・建築を担う大工の世代交代と教育のため

一体こんなにお金がかかり、ビジネス効率でいえば最悪とも言える、作っては壊すというやり方を1300年の歴史で誰が考え出したのか、不思議と考えればすごく不思議です。  誰がこの費用をまかない続けてきたのでしょうか? ローマカソリックとは違い、日本の天皇は常に象徴の地位でしかなく、一部の例外(明治時代から戦前まで)を除けば自ら財を持ったことはなく、神宮を作り変える費用はありませんでした。時の権力者や大金持ちの商人がお金を出してきたのです。そして今この費用を一般市民から集めることが、かつてないほど理解されにくい時代、危うい時代になっているのです。 それは自らの国のことに関心を持たず、天皇の祖神の遷宮すら知らない人が日本人の半分を超えているからです。

遷宮が行われる伊勢神宮は今年注目のスポットです。特に夏から秋にかけて様々な儀式が開催され、大勢の参拝者が訪れることになるでしょう。 建築材として総計1万本ものヒノキが使われるため、この期間、敷地内は新しいヒノキの香りで満たされると聞きます。 日本の守り神、厳かな木の香りのする伊勢神宮に足を運んでみるのはいかがでしょうか。

1300年前からのモノづくりの継承はまさしく歴史の奇跡です。衣食住にわたり、昔ながらのテクノロジーが今日に継承されているからです。いかに昔の人がエコロジカルであったか、すべてタイムカプセルがここにあり、その秘密を後世の日本人に伝えるべく整っています。  わたしたちがそれを読み解く科学力を身につけるまで、息を潜めて待っていると言っても良いでしょう。

竹田恒泰先生は、この遷宮のために使用する山のヒノキについて、現在のように日本中探し回るのではなく、神宮の森の再生計画により、数百年後からはこの地の木で賄えるようになりつつあると話されています。嬉しさとめまいが一緒に襲ってくる感じです。それこそが式年遷宮の意義でしょう。エコロジーとは、数百年先まで責任を持って持続可能なシステムを作ることです。もちろん、20年経った方の木材のすべては神宮に縁のある全国各地の神社に有難く配られ、鳥居その他に使われるので、一切ゴミは出ないのです。 伊勢神宮の秘密はそこに魅せられた人を虜にするもので溢れていますが、その扉は深い関心を持つ人だけに開けられるのかもしれません。

竹田恒泰先生の主な著書: 『日本はなぜ世界でいちばん人気があるのか』(PHP新書) 『日本人はなぜ日本のことを知らないのか』(PHP新書) 『ECO MIND 環境の教科書』(ベストブック)

伊勢神宮公式ホームページ:http://www.isejingu.or.jp/shosai/

Reported by 菅原研究所 青池ゆかり、菅原明子