St. Valentine’s Day in Japan ②

前回の記事では、日本のバレンタインデーについて「女性から男性へチョコをあげる」と説明しました。バレンタインデーは終わってしまいましたが、バレンタインのイベントはまだ終わっていないのです。チョコをもらった男性はお返しをしなくてはいけないのです。

「お返しは1か月後のホワイトデーに、予算は1.5~3倍で!?」

日本特有のバレンタインデーの習慣として、ホワイトデーがあります。2月14日にチョコをもらったら、1か月後の3月14日にお返しをするものです。これもまた製菓業界が普及させた習慣で、本命だろうと義理だろうと、チョコをもらった相手に、キャンディーやクッキー、マシュマロなどをお返ししようと始まったものです。

(ちなみに、ホワイトデーの習慣は隣国の中国、韓国、台湾にも広がっているようですが、欧米ではバレンタインデーの日にお互いにプレゼントし合うので、お返しをすることはありません。欧米人にホワイトデーと言ったところで、何の話?となることでしょう。)

女性たちが「本命チョコ」にかける金額は平均して2500円~3000円なのに対し、「義理チョコ」は500円以下~100円。義理チョコは用意する数が多くなるので、ひとつにかける予算も低めです。

一方、男性側からのホワイトデーのプレゼントにかける平均予算はというと、お返しの品は金額にして1.5~3倍相当の物を用意するのが必然となり、お菓子だけでは到底足りず、ハンカチやマグカップ、文具など実用的な物を添えて補うようになり、徐々に男性側の負担が圧倒的に大きくなってしまいました。妻や恋人へのお返しであれば、ディナーへ誘うとかお花を贈るだけでも想いは伝わるはずなのでそんなに難しいことではないはずですが、会社で女子社員にもらった義理チョコへのお返しとなると何を買っていいのかわからない男性は自分の奥さんや恋人にホワイトデーのお返しを用意してもらう人もいたほどで、本末転倒極まりない状態になってしまうほどでした。

「贈り物をいただいたら、お返しをする」という日本独特の発想が発端となったようですが、最近ではわざわざお返しの日を設けるのではなく、欧米のように男女問わずチョコを贈りあう方がいいのではと言う意見も出てきています。

「友チョコとMYチョコ」

最後に、この数年で一番注目されている「友チョコ」と「MYチョコ」についてまとめてみました。

「友チョコ」とは同性の友達にプレゼントするチョコのことで、女の子の間で流行っています。幼稚園児にも認知されています。「友チョコ」と言うほどなので、あげると決めたからには友達全員に公平にあげる必要があります。たいてい、「友チョコ」は手作りお菓子か大袋入りの小分けにされたチョコを詰め合わせて、ラッピングしなおして作ります。どちらにせよ、友情にヒビが入らないよう、必要個数をしっかりと確認して準備する必要があります。

「友チョコ」が友情を女子学生たちにとって、友情を確認し、さらに絆を深めるためのものであるとすれば、「MYチョコ」は20代から40代の働く女性や主婦が毎日頑張っている自分を労うためのご褒美であると言えます。「MYチョコ」の一番の特徴は予算です。1箱9粒入りのチョコレートの詰合せが¥4000したとしても、「ご褒美なので」ためらいなく購入するのです。その現状を踏まえて、大手百貨店では世界中の有名なパティシエやチョコレート職人が作ったチョコレートを集めて行うバレンタインフェアに力を入れています。

「バレンタインデーの影響力」

メディアや製菓業界の販促活動に翻弄されている日本のバレンタインデー。旨く利用できれば、親密でよりよい人間関係を築く人や、真剣交際に進展する人もいる中、必ずしもいい影響ばかりでるとは限りません。

中高生によく見られることですが、スポーツのうまい男子、クラスの人気者には女子からの人気が集中します。特にイケメンともなれば、小学生時代から同級生とチョコの数を競い合い、知らぬ間に自己陶酔して、勘違い男に陥る男子もいれば、バレンタインデーに本命どころか義理チョコすらもらえないことで、いらぬ劣等感に卑屈に陥る男子がいるのも実情です。

女子生徒の中にはチョコレートをあげること、また誰にあげるのかに重きをおく人もいます。今年のバレンタインデーは、「話したこともないけど、カッコいいから」と人気のある男子に友達と二人でチョコを渡し、キャキャッと喜んで自己満足にひたる。チョコをあげたからといって、カップルになることを期待するわけでもなく、誰にあげるのかを決めたり、友達とチョコを選んだり、作ったりする工程がただ楽しいだけなのです。

欧米では相手に想いを伝えることが重視され、プレゼントは表現方法の一つにしかすぎませんが、日本のバレンタインデーではどれだけチョコレートに重きをおいているのかが明確で、どうやってバレンタインデーという習慣が日本で繁栄してきたのかも分かります。

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世界から見ると独特な日本のバレンタインデー。「愛している」ことを日常的に表現しない日本人に与えられた数少ないチャンスであることは間違いありませんね。特に既婚者で育児中の夫婦ともなると、愛情確認をすることにためらいがちですから。バレンタインデーを有効活用して、恋人であれ、家族であれ、友人であれ、人に対して好意的な気持ちになり、感謝の気持ちをオープンに表現する日として、楽しいイベントとしてほしいものです。

おととい、バレンタイン前日のお昼休み、職場近くのスーパーへ行くと、入り口にある小さなお花屋さんは赤いバラの花束を抱えた数人の外国人男性(近くにある米軍関係者であろう)で埋め尽くされていました。
一方、スーパーの奥にあるバレンタインチョコの特設コーナーは、いくつものチョコを抱えた女性たちで溢れていました。まさに対照的な光景でした。

ちなみに、私は主人へチョコレートケーキをプレゼントしましたが、主人からはもちろん何ももらえず(笑)。ホワイトデーを楽しみにしたいと思います。